『ローマ人の物語5〜カエサル ルビコン以後〜』

 今回は、イラストがなかったので、ちょっと小細工を。
クレオパトラのイメージでこの壁紙を選びました。
「私を見て!」って声が聞こえる…(幻聴)

 話が前後して申し訳ないのですが、
カエサルはガリアに行く前から、三頭政治をしていたらしいです。

 三頭政治っていうのは、ポンペイウスとクラッスス、カエサルが結託して政治を行おう
という考えだったようです。ポンペは東方で海賊征伐、クラッススは超金持ち、と、カエサルだけ浮気スキャンダル男でしかなかったので、いっちょ実績を作るべいとガリアに赴きました。
 で、ガリアに行っている間に、クラッススが東方で戦死。三頭政治の崩壊です。
カエサルは、元老院の言葉に右往左往するポンペに不安を抱いたのか(想像)、
ガリアから帰ってくる途中、武装したままルビコン川を渡ります。
ポンペイウスは首都ローマのど真ん中にいたので、軍の編成が出来ず、
カエサルの軍事クーデターに驚いて、首都ローマから逃亡。
けれど、すぐさま軍団を作って、カエサルとギリシアでドンパチやらかします(=内乱)。
ポンペイウスは東方で海賊征伐なぞを成功させておりましたので、
ギリシア人からは神扱いを受けていました。確か神像まであったような気がする。
つまり東はポンペイウスにとって後援者がいる、最も力の発揮できる土地だった訳で…
西のガリアで力をつけたカエサルとは対照的と言えましょう。
 一進一退の戦いの後、カエサル軍はポンペイウス軍を破ります。
ポンペイウスはエジプトのアレクサンドリアへ逃げますが、
そこで、船乗りに殺されてしまいます。あとから、アレクサンドリアに着いたカエサルは、
ポンペイウスの首を見て泣いたとか!このシーンは印象深かったです。
ローマ人は同朋意識が強いですし、異国の地でポンペイウスが見知らぬ者に
殺されてしまった事がきっと悔しかったんでしょう。それにカエサルは、投降してきた敵を
許すと言う「寛容(クレメンティア)」をプラカードに掲げるくらいでしたし、
きっとポンペも投降すれば許す気だったのでは、と思います。


 このポンペイウスを殺したのは、クレオパトラの弟側の人間だと言われています。当時、エジプトでは姉と弟が王位を争っていたのですけれども、カエサルが、その姉クレオパトラ側についたのは、クレオパトラの色香に負けたのではなく、クレオパトラの弟が、反ローマの姿勢を取ったからだ、と。クレオパトラもカエサルと良い仲になったものですから、こいつは落としたわね!と思ってしまったのだと思います(誰だってそう思うけどな)。
 カエサルファンのクレオパトラに対するブーイングは、凄惨なものがありまして・・・
塩野先生も凄かった。
『カエサル自体が、愛してはいても溺れる性格ではなかった』とか
『恋愛が介在することで左右できるほど、国際政治は甘くない』とか。
いくらユーモアや語学の才能があっても、それイコール「知性」ではないとか。
これは、カエサルの死後、カエサルに裏切られたと思ったクレオパトラの暴走が、カエサルおよびローマ人ファンの反感をかってしまったので、私は一概に、彼女を責められるものではないと思います。確かにちょっとお馬鹿さんだったけど、(ローマ軍を使って私欲を肥やすとか)、それが、カエサルに裏切られた反動だったとしたら、とても人間的な行動ではないかと思います。だけど彼女は女王の立場だったし、政治の世界に恋愛を持ち込む事で被害がより大きくなった。それは古代の君主制では当たり前の世界だったのですが、ローマがそれをやめて力をつけてきた、その時代の空気を読めずに自滅したのがクレオパトラです。空気の読めない王は自国を滅ぼすんですね…。
 クレオパトラを暴走させたカエサルの裏切りとは何か、と言いますと、それはカエサルの遺書に、クレオパトラが産んだカエサルの子を庶子に認める、と書かれてなかったことです。自分の後継者はオクタビアヌス、だと。その後、クレオパトラはローマの軍人アントニウスを誘惑して、カエサルの子を認定させますが、その子はオクタビアヌスの手によって殺されています。塩野先生曰く、「庶子と認めなかったことが、彼の愛だった」と。


 カエサルは多くの愛人がいたけれど、愛人たちはいがみ合う事なく、カエサルも恨まれなかった、というのは有名な話ですが、クレオパトラだけは例外でしたね。
 そんな女泣かせのカエサルも、男を泣かせています。いや、これはホモとかではなくて…。やっぱりラビエヌスかなあと。彼はポンペイウスの土地出身者で、クリエンテス(保護され、応援する立場)だった為、カエサル側から離反してルビコン川も、息子と奴隷と三人でぽつんと渡るんですよ、副将まで務めてカエサルと共に死線を潜り抜けてきたラビエヌスが(涙)!カエサルは、自分が正しい行いをすれば、真っ直ぐな論理を持って行動すれば、自然と人はついてくるものだと考えていたらしいのですが、やっぱり人間って論理だけで動けない時もありますよね。迷ってる時は「俺についてこいよ!!」って理屈ぬきで言って欲しいものですよ。カエサルはローマの伝統の根深さを知ってたし、言わなかったのではないかと思います。ああああ、勿体無い…。ポンペイウスは確かに戦の天才だけども、その先が無いって言うか…。政治的能力がイマイチでね、そんな奴に優秀なラビエヌスを渡すなんて…。人間の葛藤が歴史のドラマを生むのです!!実はクラッススの息子も、カエサルの配下として活躍したのですが、親父が帰って来いよと。俺の東方征伐に加われよと、そしたらそのクラッススJrがあっさり戦死しちゃったんだよね…。いくら優秀な人間でも、それを使う立場の者が利口でなかったら無駄死にする。カエサルよりも、血縁を選んだ者たち…。当時は理解されたでしょうが、カエサルがこうも歴史的偉人となっては、「勿体無いことしたよね」って言われても仕方がないような気がします。だからこそ、歴史ドラマに悲しい花を添えたとも言うのでしょうけれども。


人物を主に語ったので、共和制から帝国制の移行の話が全く出来ませんでした。
難しいから語れないんですよね…。カエサルは、ポンペイウスを打破した後に、ローマに帰り、
終身独裁官に就任しますが、間もなく、共和制を守ろうという者たちによって、暗殺されてしまいます。カエサルは、最期まで格好良かったですよ…!倒れてもなお、血まみれの手でトーガの乱れを直そうとしたらしい。23ヶ所も刺されて出来る事ではありません。伊達男の骨頂を見た思いです。これはねえ、ほんと塩野先生の文章だと興奮するんですよ…
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