坂門人足(さかとのひとたり)と椿の花

「坂門人足(さかとのひとたり)」



彼が腰をかけているのは、
自身の歌が彫られた歌碑です。
つまり、絵の中の坂門は幽霊です。

2009年3月に彼の歌碑があるという
奈良県の阿吽寺に行った
のですが、
中々、歌碑が見つからず、
やっと見つけた時の喜びを表しました。
(分かりにくいわ)


坂門の作ったパクリ本歌取りの歌が、
宮中で流行し、
大宝元年(701)九月、太上天皇(持統)の紀伊行幸の
道中、同じ景色ばかりで暇を持て余した持統の心を慰めるべく、
即興で歌を詠んだという事に
なったのではないかと思っています。
箔がついたので万葉集に載りました(想像)。


巨勢山之 列列椿 都良都良尓 見乍思奈 許湍乃春野乎 (万1-54)
巨勢山の つらつら椿 つらつらに 見つつ思はな 巨勢の春野を
巨勢山の 連なる椿をよくよくと 見て思いましょう 巨勢の春野を

思いましょうというのは、秋に作った歌だからです。
つまり、目の前にある椿の木には花がない状態、葉っぱばっかり。
退屈な景色も思いをはせれば…という事でしょう。


本歌はストレートに春の歌です。
河上乃  列列椿  都良都良尓  雖見安可受  巨勢能春野者 (万1-56)
河上のつらつら椿つらつらに見れども飽かず巨勢の春野は
川のほとりに連なり咲く椿は、どれだけ見ても飽きはしない。巨勢(こせ)の春野は

とても良く似ていますが、
坂門の歌の最大の特徴は、椿が出ているのに「秋に詠んだ」
という事でしょう。


坂門の歌はこれ以降万葉集に出てきません。
一発屋だったのね。

既存のものを利用して、
相乗効果で面白いものを作るという点で、
M−1に出てきそうな芸人タイプの男だなあと思います。


下書きでは坂門はそばかす顔でしたが、
色を塗り重ねるうちに消えてしまいました…。


2011年1月中旬から3月いっぱい、このトップ絵でした。


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