*詩歌ノート*

このページは、『四季のうた』(第二集)に載っていた、
詩歌をメモしているページです。


欲張って余りたくさん載せると、
色々とまずいんじゃないかという事にようやく気づきました。
第一集では紹介しすぎた感じがするので、
(356の詩歌のうち14つを晒した)
今回は控えめに行きたいと思います。

『四季のうた』ってこんなに面白い詩歌が紹介されているんだ!
そう思っていただければ幸いです。

本を手に取るきっかけとなればと、
究極的には『四季のうた』の本の元になる
『四季』掲載の読売新聞(朝刊)と契約して頂きたく。
(そこまで?!)






・風呂場より走り出て来し二童子の二つちんぽこ端午の節句    佐佐木幸綱



・・・えー、何と言いましょうか、
やはりこの歌のキモは「ちんぽこ」ですね。
こんなにさらりと言える佐佐木さんが素敵です。

実は、この歌以外にも佐佐木氏の作った歌の中で
好きなものがいくつかあるのですが、
“佐佐木”という字を見るだけで
上記鉤括弧(かぎかっこ)内の四文字が頭の中を過ぎり、
ああ、あの人か…。
と思ってしまいます。
何でしょうか、この歌の吸引力は。

たぶん女の人には詠めない歌だと思います。


・蓴菜(じゅんさい)や一鎌入るる浪(なみ)の隙(ひま)        惟然(いぜん)



蓴菜はハス(睡蓮)の仲間で、
沼や湖に浮いている葉の新芽…
が、ぬるぬるして美味らしいです。

蓴菜を刈るべく水辺に入った人が、
手を動かすたびに広がる不定期な波紋。
それを詩にしてしまう所が何とも言えません。

何気ない情景なのですが、
詩人の目を持つ惟然だからこそ、
掬い上げられた事象なのだと思います。

惟然は江戸期の俳人で、芭蕉の弟子。


・わたつ海(み)のかざしにさせる白妙(しろたえ)の なみもてゆへるあはぢしま山      よみ人しらず



淡路島を擬人化している所がにくいですね。
かざしというのは髪飾りです。
白い波の髪飾りで海の髪を結うのが
淡路島山なのだと。

ちなみに、淡路島山って
現在の地図には載っていないんですよね。
海を隔てて淡路島を見ると、
もりあがって見えたから、ああ、あれが淡路島なんだ、
と思ったんでしょうか。

淡路島は
兵庫県と四国の間に横たわる、瀬戸内最大の島。
四国の徳島を昔、阿波の国と言ったので、
阿波(へ通じる)路(の)島。

古今和歌集のよみ人しらずさんです。
ロマンティックが止まらない!


・道の辺に清水流るゝ柳陰 しばしとてこそ立ちどまりつれ       西行



またもや西行さんの歌です。

一番好きな歌かもしれません。
西行の歌、全部知らないですが…^^;

道行く西行の足を止めてしまったものは何か。
しばらくの間見とれてしまうほどの、
柳の陰に流れる清水…。
私もそんな風景とめぐり会いたい。


・空蝉の一刀浴びし背中かな     野見山朱美(のみやまあけみ)



正に、言い得て妙。
句の表現も内容もスパッとして清々しいです。
蝉の抜け殻の穴をそういう風に言えるなんて!

野見山さん…
検索しても出てこない貴女は一体だれ?


・秋の朝卓の上なる食器(うつわ)らに うすら冷たき悲しみぞ這(は)ふ     前田夕暮



秋はセンチメンタルな季節です。
前田夕暮さんの身に一体何があったのでしょうか。
たぶん、何もなかったのだと思います。
秋は何かにつけ感傷的になる季節です。
どうという理由もなく…。
(万が一理由があったにせよ、それは伏せて欲しい歌心)

いつもどおりの朝なのに…秋が来たから?
と、いうのが良いんですよねー。

それにしても、
悲しみって這うとちょっとホラーですね。
いや、這って許せるのは蛇と赤ちゃんくらいなものですが。


・ほのぼのと春こそ空にきにけらし あまの香具山霞(かすみ)たなびく      後鳥羽上皇



ほのぼのって!
何か、すごい癒し系の歌ですね…。
とても、隠岐に流された人とは思えません。

後鳥羽上皇は平安末期から鎌倉初期の人。
武家政権に反発し承久の乱を起こしましたが、
2ヶ月で鎮圧され島流しに。

中世を代表する歌人で、こちらの方が株が高い。

小倉百人一首の歌(※)より上の歌の方が好きです。
京都に住んでいて、何で奈良の天香具山を詠ったのか不明ですが。
ほのぼのと春が空からやって来たようだよ。天の香具山に霞がたなびいている。

※人も惜し人も恨めし味気なく 世をおもふ故にもの思ふ身は
完璧に島流し以後の歌だこれ


・頭髪は黒でなければならないか――生徒の列を選り分け進む     大引幾子



思わず考えさせれる一首です。
教師の中に渦巻く疑問。
それでも校則を破る者を選別しなければならないという現実。
上の句と下の句のコントラストが凄い。
先生としてどんな人かは知らないのですが、
真面目な一面を持つ人なのだなあと思います。


・巨勢(こせ)山のつらつら椿つらつらに 見つつ思(しの)はな巨勢の春野を     坂門人足(さかとのひとたり)



見てて元気になる歌ですね。
つらつらって何だよ!と思いつつ。

万葉集に収められているこの歌、
元は全部漢字で表現されております。
巨勢山乃列列椿都良都良爾見乍思奈許湍乃春野乎(巻1・54)

ポイントは「つらつら」に該当する部分が「列列」となっている事。
つまり、椿の木がたくさん連なっているという表現なのではと。

都良都良(つらつら)は、ものを味わって見る際に使われた擬音語でしょうか…
「“よくよく”見る」といった感じ?

この歌、持統上皇の紀伊国へ行くとき、
その旅の途中で歌われたんですが、
何と、10月です。
えーとだから、坂門(さかと)はね、
椿にあふれた巨勢の春野を思い起こそうではありませんか!
と言いたかったみたいですね。
持統上皇は退屈だったのでしょうか?
「誰でもよい、一首歌を詠め」(怖!)
そしてピエロに選ばれたのが坂門でした…(妄想)

巨勢は奈良盆地の最南部。
吉野の山を横切って盆地を出るところ=和歌山へ行く道がある所です。


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