上方落語「崇徳院」一覧(H27/2015.11.28)
 →東京の「崇徳院」一覧もあります。

「松鶴型」は、熊五郎が褒美に目が眩まない。お上さんが同情しない。「米朝型」は、熊五郎は褒美に目が眩む。お上さんが同情する。

注1 米朝以前の噺家は、サゲ【瀬戸物・人徳・鏡・無し】を落語会によって変えていた可能性が高い
注2 若手〜中堅の噺家は今後内容を変える可能性あり
注3 赤字は追記した箇所です。情報を下さった方への目印ですが、将来的に黒字にする予定です(済みません)。

  演者 視聴媒体 メモ   演者 視聴媒体 メモ
  二代目桂三木助

速記

「はなし」(明治40年)
「豆たぬき」(明治43年)

今の崇徳院と比べて短い。
熊のボケ少なし。
握り飯弁当+草鞋10足+
5足。サゲは
瀬戸物

お嬢さんの家は鴻池善次郎、

若旦那の家は「玉造のよろかん」

       
四代目笑福亭松鶴

速記

「滑稽落語名人腹鼓」
(大正9年)


「落語全集」(昭和4年)

二代目三木助とほぼ同じ。

草鞋10足のみ。
後半+αの台詞あり。
サゲは
瀬戸物

       


五代目笑福亭松鶴 速記
(昭和23年のラジオ放送台本)
『芸能懇話 第7号』

二代目桂三木助、四代目松鶴
の内容を大幅に革新。

熊五郎は歌を暗記している。
お櫃なし。草鞋10足+10足
サゲは
瀬戸物


四代目 桂 米團治 「上方はなし」に
断片的に出てくるのみ
サゲは瀬戸物か?鏡か?無しか?
熊が褒美に目が眩む場面は
あったかもしれないが、
お上さんが同情する場面は
無いような気がする。
五代目桂文枝 CD

5代目松鶴の速記に
ほぼ一致。
お櫃なし
サゲは

       
二代目桂春蝶 CD 五代目文枝の内容を
さらに絞った印象。お櫃なし

20分で終了
。サゲ無し。
       
桂 文太 ・平成23(2011)年9月17日
田辺寄席(由瓶の段)
・平成23(2011)年10月22日
田辺寄席in寺西家
見台あり、サゲは鏡。
文枝師の内容ベースに、
自己アレンジが混じる。
石川五右衛門の歌+α。
       
六代目笑福亭松鶴 CD、
速記(講談社、「上方落語」)

五代目松鶴の内容に
アレンジを強く加えたもの。

但し熊五郎は歌を忘れている。

(五代目松鶴と違うやり方)。


お櫃(
握り飯の場合も)、
たくあん有り。草鞋5足+10足
サゲは五代目も使用
した人徳。



桂 米朝 DVD、
速記(上方落語メモ、
米朝コレクション)

若干変えたところはあるが、
あらましは米團治師に
教わった通りらしい

お櫃+草鞋3足+10足

鏡のサゲ。  

桂 春若 落語日記(ブログ)情報
平成21年8月22日
第19回笑ろう亭あさひ寄席
熊がゆっくりと相談にのる。
六代目松鶴と同様、
握り飯十ほど持たす。
サゲは人徳。
三代目 桂 文我
(前名:桂 我太呂)
CD 米朝ベースに多数のアレンジ。
若旦那の顔が赤くなる、
お上さんの寝言、
脈が速くなる等。
 襲名前の昭和42年には既に
米朝型(直接教わったらしい)。
※桂文紅の日記本に、昭和33年2月
2日の落語会で「崇徳院」をしている
      笑福亭 福笑

ぴーまさんから

教えてもらった情報

米朝全集を読んで覚えたらしい。
      桂 ざこば

・CD(襲名直後の)

・2013年7月に

動楽亭で聴いた

米朝べースに兄弟子枝雀の影響有。

ぐるぐるぐる。サゲ無し(CD)。

動楽亭では鏡のサゲ。

米朝さんはしゅっとしてるけど、

ざこばさんはもっちゃりしてる。

      桂 吉朝 DVD

米朝テキストに忠実な印象。

ただし将棋の場面あり。所作繊細。

      桂 米二 平成22年9月26日
音太小屋寄席
米朝ベースにアレンジ
眉毛が無い。もう脇と股間
しか残っていない
      桂 千朝 平成22年6月4日
千朝落語を聴く会
米朝ベースにアレンジ。
Oh!残念というポーズを取る。
サゲ無し
笑福亭 仁鶴 動画 六代目松鶴ベースに、
米朝の設定がやや入る。
サゲは鏡。
六代目笑福亭 松喬 CD、
繁昌亭昼席
米朝の内容とほぼ一致か
但し、年が若い医者が出る、
面切る(仁鶴)。油虫が“イチコロ”。
熊が優しい。狩人を出せ(枝雀)。
精も根も尽き果てて。春の心地。
サゲ無し
五代目 桂 文三

満腹全席 五代目 桂 文三』

[DVD] (2009年12月収録)

師五代目桂文枝の影響は少ない。

六代目松鶴の内容に東西の

くすぐりや独自の工夫が加わる。

たくあん突き刺す。

笑福亭 呂鶴 繁昌亭昼席 松喬と殆ど同じ内容らしい。
サゲ無し
笑福亭 笑助 平成23年1月18日
スケスケときわ二人会
系統としては六代目松鶴か。
たくあんを突き刺す。
お上さんが寝しなに歌う。
桂 ひろば 平成22年9月30日
get's 待っツ 動楽亭
ざこば師がベースか。
米朝ベースに、何か言葉を
省略している。柔らかな印象。
サゲ無し
      桂 吉弥 CD 米朝・枝雀の内容適宜。
将棋の場面は吉朝師か
      桂 雀三郎 CD 米朝ベースだが、言葉を
丁寧に選んでいる印象。
「油虫の“出ん”まじない」
ボンクラは松鶴。
サゲ前のアレンジが強い
      桂 雀喜

平成26年6月30日

ジャッキー7

言い切ってしまえれば

雀三郎師の型。ちょっと古風め。

独自と思われる工夫あり。

桂 壱之輔 平成23年1月24日
春撰組の会

系統としては仁鶴か。
若旦那の身体がくの字。
ぐるぐるぐる。サゲ無し。

ざこば師に習ったとのこと。

桂 雀五郎 平成23年6月20日
雀五郎こごろう二人会
基本的に雀三郎師と同じか。
ボンクラは無かったような
気がする。
        桂 紅雀 平成21年10月15日
雀の学校
平成23年4月26日
get's 待っツ 動楽亭
米朝・枝雀の内容適宜。
枝雀の影響は吉弥より濃い。
若旦那と熊五郎に絆がある。
サゲ前のアレンジが強い
サゲは無し
        笑福亭 三喬 DVD 米朝ベースにアレンジ。
細部に到る工夫多し。
        桂 小米朝
(五代目米團治)
CD 米朝ベースにアレンジ。
三十石の船、若旦那半日ボー
この型を継ぐ者を強く望む。
       
桂 枝雀 DVD、CD 噺の構成は米朝型。
アレンジが極めて強い。
同じ内容を継ぐのは難しい。
サゲ無し。
       
桂 南天 平成24年5月8日
米二南天二人会

米朝テキストベース。
枝雀のくすぐりを追加。
熊が欲に取り付かれない。
お上さんが同情する場面あり。
万歳して花瓶が落ち、
鏡が割れるサゲ。
上方を代表する型になって欲しい。

       
笑福亭 生喬 平成23年4月24日
生喬まるかじりの会
前半は六代目松鶴の短縮版。
米朝の影響は一見して
少なく感じられるが、熊の
欲が出る所、お上さんの
同情する場面はあり。異色

*米朝一門の米輔は、人徳のサゲをするらしい。どちらの型に入るか判じがたい為ここにメモしておく


・笑福亭一門の内、米朝型の「崇徳院」を演じている人がいる。
 昔から、一門関係なく自分に合う「崇徳院」を選んでいた風潮があるようだ
松鶴型はこのままだと滅んでしまうと思われる
(私は、三代目文我くらい特徴のあるお上さんなら、松鶴型でもいけると思うのだが)
(それか、二代目春蝶のようにスマートに演じきるか)

・はじめは褒美に目が眩まないが、お上さんに「家主になれるんやで」と言われてから「あ、そうか!」と
 欲に目覚めるという手がある。生喬さんの熊五郎は欲に目覚めるのが遅かったが、こういう演り方だったのだろうか。
・勘のにぶさが「崇徳院」の熊五郎の性格なので、上記のやり方はその設定に沿っている。
・松鶴+米朝のやり方と言える

・旦那の「お上に訴える」、熊五郎の「花咲く春の心地して」という台詞は、
 松鶴型の特徴であるが、米朝型に吸収されつつある
・米朝師の演じる「崇徳院」をそのまま演じる噺家は殆ど居ない。しかし、
 「熊五郎が欲に目が眩む場面」と「お上さんが同情する場面」は将来消えないだろうと思う



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